第1回 温泉に入る前に覚えておきたい四箇条
◎その1、水分補給お風呂に入ると、300〜500mlの汗をかきます。
入浴中に汗をかくと、血液の粘度が高まり、いわゆる「ドロドロ血」になります。
「ドロドロ血」の状態で入浴すると、血圧の急上昇により血管は詰まったり破れたりしやすくなります。
それは脳卒中や心筋梗塞という症状になってあらわれます。
入浴後は喉が渇くので水分補給をする人は多いのですが、大切なのは、入浴前にも水分補給をすることです。
ただしガブ飲みは血液中の水分が急に増え、血圧が上がることもありますので、「入浴前後に各々コップ1程度の水を飲むこと」を心がけましょう。
なお、水を飲んでから15分ほどでサラサラ血になりますので、入浴前の水分補給は、「入浴15分前」と覚えましょう。
こう考えると、温泉旅館に行って、温泉に入る前に部屋でお茶を飲むのは理にかなっています。
適度な水分補給と入浴前の休憩を兼ねますし、温かいお茶なら体を温め、「体の内側からかけ湯」をするようなものです。
飲み物は、ミネラルウォーターなどの水の他に、汗で失われやすい成分を含んだスポーツドリンク、湯あたりを防ぎやすいビタミンCを含むオレンジジュースなどもいいでしょう。
ただし、糖分はあまり含まないものの方がいいでしょう。
◎その2、かけ湯
お風呂に入る前に体にお湯をかけることを「かけ湯」と言います。
これは、体の汚れをおとしてから入浴するマナーと思われがちですが、もう一つ、お風呂の温度に体を慣らしたり、温泉なら泉質の刺激に体を慣らしたりという意味があります。
入浴前の水分補給が大切なのは、血液の急上昇による脳卒中や心筋梗塞を防ぐという話をお伝えしましたが、特に体が冷えている状態で熱いお風呂に入ると血圧が急上昇し、血管がつまったり破れたりという危険性があります。
そこで、「かけ湯」で体を温めて、血圧を急上昇させないようにお風呂に入ることが大切です。
正しい「かけ湯」の方法ですが、心臓の遠くの足先など体の末端から順にお湯をかけていくということです。
かけ湯は体がしっかり温まるよう、時間をかけて十分おこないましょう。
そして、頭からお湯をかぶることを「かぶり湯」といいます。
これは頭の血管を広げるので脳貧血によってあらわれる立ちくらみを防ぎやすくします。
かけ湯の後、10〜20杯のかぶり湯をするといいでしょう。
さらには、かけ湯で体が温まったからといってジャボンと急にお風呂につかるのでなく、ゆっくり入り、ゆっくり出るというのも入浴のコツです。
入浴で大敵なのは急激な温度変化だけでなく、水圧による負担もあるのです。
◎その3、食事後の入浴
食事をすると体には何が起こるでしょうか?
食事をすると消化のために、消化器に血液が集中します。
一方、入浴は全身の血のめぐりをよくするので、食後に入浴すると消化器に集まらなければいけない血液が分散されてします。
そこで、消化不良が起こってしまうのです。
さらには、入浴による水圧で消化器を圧迫します。
これに加えて、熱いお風呂なら交感神経を刺激し、胃の働きを抑制するのです。
こんなことから、食事の直後は入浴しない方がいいのです。
入浴するにしても、食後60分程度は休憩をとりましょう。
そして、このようなことから、入浴直後の食事も避けた方がいいです。
入浴により全身の血行がよくなってしまうと、消化器に血液が集まりにくくなるのです。
入浴後は、30分程度は休憩してから食事をとりましょう。
◎その4、分割浴
お風呂は体温以上の温泉では、熱いお湯ほど体に負担がかかるために適正な入浴時間が短くなります。
例えば、もっとも日本人が気持ち良く感じると言われる42℃のお湯なら5〜6分が適当です。
それ以上の長湯をすると体に負担をかけるのです。
一方、3分入浴し浴槽から出て休憩、また3分の入浴後休憩、最後に3分の入浴というように浴槽から出ての休憩をはさむと42℃のお風呂でも9分間入浴することができます。
しかもこの入浴法の方が体の芯まで温まるので湯冷めしにくいのです。
このように浴槽から出ての休憩をはさみ複数回入浴する方法を「分割浴」と言います。
「反復浴」と言うこともあります。浴槽から出ての休憩と言っても、服を着る必要はありません。
浴槽から出て、温熱作用や水圧から開放されることを休憩と考えればいいのです。
一気に長湯せず、入浴中に体に負担がかかったなと思ったら休憩する習慣をつけましょう。
その他の記事
第2回 入浴後のビール第3回 お茶とお菓子
第4回 温泉地における効果
第5回 湯治について
第6回 快眠入浴について